第12章 東京卍リベンジャーズ・場地圭介 ②
彼女は涙がこぼれないように上を向くと
大きく深呼吸した
俺の顔を見て
再び話し始める
『…その事があってから……私…あの人が家に帰って来た夜はずっとこんな風に外で過ごしてたの……ファストフード店は変な人に声かけられたりするから…最近はずっとこの店。……家からも遠いから、まだあの人にもバレてないみたいなんだ……カラオケとかネカフェは遅い時間だと身分証見せなきゃいけないし…他にいい所も知らなくて…』
「……」
『…あ、でもね……私…大人っぽく見えるらしくて……お化粧したら補導されなくなったんだよ。…だから心配しないで大丈…』
「大丈夫な訳ねーだろ‼︎」
『…っ…』
「…何で……オレに言わなかったんだよ…」
俺は席を立つと
大声に身体をこわばらせている彼女の腕を掴んだ
「…来い」
会計をし、強引に手を引いて店から連れ出す
戸惑いながらついてくるレイナを
ゴキの側まで引っ張っていき
メットをかぶせた
連れて来たのは
自分の家だった
玄関の前で、掴んでいた腕を離し
ポケットから鍵を取り出してドアを開ける
「…入れよ…オフクロは仕事で居ねぇ…」
『……お邪魔…します…』
彼女が玄関に入り
ドアが閉まった瞬間
俺はレイナの身体を強く抱きしめていた
『……圭…介…?』
「………言わなかったんじゃねぇ………言えなかったんだよな………オレが……頼りねぇから…」
『……圭介……違う…』
「…オマエがこんなに苦しんで…辛い思いしてたのに……何も知らなくて………ずっと…気付いてやれなくて………本当にごめん………ごめんな…」
『……』
「…………オレ………オマエを守ってやりてぇ……………こんなヤツじゃ…頼りねぇかも知んねーけど………レイナのこと…守らせてくんねぇか…?」
『………ぅ…………ぅう………圭…介…………っ…圭介ぇ………グスッ………ぅわぁぁぁぁん…』
俺の胸に顔を埋めて
レイナは小さな子供のように泣きじゃくった
これまで誰にも甘えることができなかった彼女が
長い間堪え続けてきた涙は
なかなか止まってはくれなかった
「……大丈夫だ……もう大丈夫だから…」
彼女の涙がおさまるまで
滑らかな髪を優しく撫でながら
俺は
ずっと
そう繰り返していた