第12章 東京卍リベンジャーズ・場地圭介 ②
涙に濡れた顔をして
俺の頬を拭ってくれたレイナ
これ以上俺を苦しめたくないと
自分からサヨナラを言って
背を向けた
震えている小さな肩を
抱きしめてやりたくて
伸ばした俺の手は
宙を切って
そのまま落ちていった
目を開けると
告白したあの夜と変わらない夜景が広がっていた
レイナを抱きしめて
初めてキスをした
胸が震えるような幸せな感覚を
まだ覚えていた
けれど
あの時、腕の中にあった笑顔は
もうどこにもない
" 全部終わったんだ " とため息をついて
ポケットに手を入れた時
何かが指にあたった
取り出して見ると
それは
薄いピンク色をしたイルカのキーホルダーだった
「……」
俺はキーホルダーを強く握りしめ
思い切り遠くに放り投げようと腕を振り上げた
でも
どうしても出来なくて
単車の側に戻った俺は
そのキーホルダーをゴキの鍵に付けた
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次の日の放課後
俺が小テストの結果のことで担任と二者面談をしている間
レイナと千冬は教室の前の廊下でずっと話し込んでいたらしい
その夜の集会が解散した後
駐車場に戻りながら、千冬が言った
「…そういえば場地さん……レイナさんて、優しくてマジいい人っスね……今日、いっぱい喋っちゃいました…」
「……そうだった……オマエら面談中にうっせーんだよ…オレん所まで笑い声が聞こえてたぞ…」
「わ、すんませんっ…場地さんの話で盛り上がって…つい…」
「あ゛?何だよ…人の事笑いモンにしてやがったのか?」
「そんな訳ないじゃないっスか!」
「……じゃあ……何話してたんだよ…」
「…っ…それは……あのぉ……」
「…?…」
「……場地さんの…好きな所……とか……言い合ってました…」
千冬は少し言いにくそうに白状すると
「お互いに…分かる分かるって感じで……スゲー意見が合うんスよね…」と何のフォローにもならない事を言って笑った