第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
『……竜…胆…』
「……」
竜胆は2人の方へ歩いていくと
間に割り入り、蘭を睨んだ
「……オレの居ない間に…またコイツに手ぇ出す気?」
竜胆の瞳孔を見て
蘭は言った
「……オマエ……薬キメてんのか?……いつからやってる…」
「あ?…ンなこといま関係ねぇだろ‼︎」
竜胆は声を荒げ
蘭の胸ぐらを掴んだ
『……竜胆…っ………やめて…』
レイナの声に
竜胆は蘭から手を離した
彼女の方へ向き直ると
濡れた頬に手を当てて親指で涙を拭う
「…ん?……どうしたレイナ…こんなに泣いて…」
わざとらしいほど優しい声でそう言った竜胆の視線が、パッキングされたスーツケースにとまると
その顔から一切の表情が消えた
「…………何だよ……コレ…」
『……ぁ……あの…これは…』
「……なぁ……オレに黙って出てく気だったのか…?」
その声は
怒りを含んで震えていた
「……やっぱりまだ続いてたんだな……2人で新しいとこに住むつもりだったのかよ…」
『…ち、違うよ竜胆…』
「……荷物まとめて……着替えまでして……オレの居ない時にコソコソ会って話して……何が違うんだよ…」
『………ごめんなさい………私……アナタに言わなきゃいけないことがあって…』
「…っ…」
『……こんなにお世話になってるのに……ずっと言えなくて…………黙ってて…本当にごめんなさい…………私…っ…』
「…聞きたくねぇよ…」
言葉の続きを
竜胆はキスで遮った
『……ん…っ………んん……』
唇を離すと
竜胆は指先でレイナの顎を上げさせ
瞳の中を覗いた
「……オマエが出てく理由なんて…聞きたくねぇ…」
『…………竜…胆…』
一瞬苦しげに顔を歪めた後
再び無表情に戻る
「………レイナ………オマエは……オレにとってこの世でたったひとりの特別な存在なんだ………大切に思ってたからこそ…オレみたいな奴の側に居ちゃいけないと思って…オマエのことを突き放した…」
『……ぇ…』
「……でも…分かったんだよオレ……レイナがいなきゃダメだって…………たとえオマエの気持ちがオレにはもう無くなってたとしても構わない………兄貴の方が好きなら…それでもいいから…………ここから居なくならないでくれ…」