第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
『……あの部屋の物は全部処分したのに………それだけが…どうしても捨てられなかったの…』
顔を上げると
彼女が最後の荷物をスーツケースにしまい終えたところだった
蘭の前に歩いて来ると
レコードを手に取って見つめる
『………私のこと……最低だって思ってるでしょ…?………何も言わないまま…竜胆の優しさに甘えて…』
レイナの問いに
蘭は小さく首を横に振った
『…っ…でも………昔の気持ちも…ちゃんと思い出したの………私…やっぱり竜胆の事が大好きだった…………フラれた後も…ずっと引きずってて……いつかもう一度会いたいって思ってた…………だから……いま、竜胆の側に居られて…嬉しいはずなのに……すごく…幸せなはずなのに…』
「……」
『………アナタのことが忘れられない…』
そう言ったレイナの瞳から
涙がポロポロと零れた
『……大好きな竜胆を…これ以上傷付けたくない………でも…あの夜のことを考えると…苦しくて…』
「……」
『……もう……どうしたらいいか分からないの…』
「………レイナ…」
この曲を聴きながら踊った夜
2人の気持ちは
確かに互いを求め合っていた
嘘をついた罪悪感から
正直な気持ちを抑え込んでいたけれど
あの夜のことを忘れられないでいるのは
蘭も同じだった
レコード盤を抱きしめるようにして泣く彼女に
蘭は手を伸ばした
震えている小さな肩に指先が触れる寸前
背後から
声が聞こえた
「……そこで何してんの…」