第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
竜胆が蘭を殴った夜から
数日が経ったある日
その夜は
竜胆の帰りが蘭よりも遅かった
先に寝ているように言われたレイナが
夜中に目を覚まし、キッチンに水を飲みに行くと
シャワーを浴び終えバスルームから出てきた蘭とちょうどはち合わせになった
『……おかえりなさい……蘭…』
「…おぅ…」
そそくさと部屋へ戻ろうとしたレイナだったが
思い詰めたような顔をして足を止めた
『……ぁ………あの…っ…』
「……何だ…」
『………竜胆……最近、眠れてないみたいなの………ご飯も全然食べてくれなくて…………それで……何か…あったのかなって…』
「……」
何も答えない蘭に
レイナは全てを察した
『…………そっか………もう…知ってるんだね……私たちの事…』
瞳を潤ませたレイナは
堪えるように強く唇を噛んだ
『……っ…それじゃ……おやすみなさい…』
微かに震える声でそう言うと
蘭に背を向け
レイナは竜胆の部屋へと戻っていった
ノックをしても返事がないので
蘭がドアを開けると
予想通り
服を着替えたレイナが
スーツケースに荷物を詰めているところだった
「……こんな時間に出て行くつもりか…」
『……』
彼女は何も答えず
床の上に広げられた荷物を次々に詰め込んでいく
「……」
レイナの少ない持ち物の中に
見覚えのあるものを見つけて
蘭はそれを拾い上げた
シングル盤のレコード
古びた紙製のスリーブには
手書きで
" In a Sentimental Mood / Ella Fitzgerald "と書かれていた