第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
自室に戻った竜胆は
部屋のドアに背中をつけたまま放心したように立ち竦んでいた
兄とレイナの間に何かあったことがたとえ事実なのだとしても
本当のことなど知りたくなかった
どんなに問い詰められたとしても
蘭にはいつもみたいに飄々ととぼけて、話をはぐらかして欲しかった
それなのに
自分のしたことを認め、素直に謝罪した兄を
竜胆は許せなかった
「……自分だけ……楽になってんじゃねぇよ…」
竜胆はベッドサイドへ歩いていくと
崩れるように床に膝をついた
月明かりが照らすレイナの穏やかな寝顔は
あの頃と何も変わっていなかった
指を伸ばし、滑らかな髪を撫でると
口元が柔らかくほころぶ
「……やっぱり………会わなきゃよかったのかな……オレ達…」
独り言を呟いた竜胆は
彼女の髪を一房、指に絡め取ると
目を閉じ
そっと口付けた
その夜以来
竜胆は、蘭と言葉を交わすことは無くなった
仕事も全て別行動を取るようになり
一日中姿を見ない日もあるほどだった
レイナに対しては
直接何も聞いたりはしなかったけれど
抱いていた疑惑が現実として認められてしまったことで
竜胆の気持ちはさらに追い込まれていった