第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
「………オレ……知ってたよ………兄貴が何かを隠してること…」
「……」
落ち着いた声で
話し始める
黙ったままでいる蘭に
竜胆は続けた
「……マイキーに仕事頼まれたって言ってたけど……そのマイキーが…"最近、蘭はひとりでどこに行ってるんだ?"って…オレに聞いてきたから…………まさか…レイナが絡んでるとは思いもしなかったけどさ…」
「……」
「……こんなすぐバレる嘘つくなんて兄貴らしくねぇって……不思議だった…」
「……」
「………なぁ………何であの夜…レイナの部屋にオレを呼んだんだよ…」
目の前の空になったグラスを見つめたまま
蘭は何も答えなかった
「………本当はあの時……全部打ち明けるつもりだったんだろ?……兄貴が…レイナと………………っ……レイナ "に" …手ぇ出した事…」
「……」
「……言えよ兄貴…………早く言いたくて……バラしたくて仕方なかったんだろ?…」
「…竜胆…」
「……っ…」
「………………悪かった…」
次の瞬間
蘭は顔面を思い切り殴りつけられ
気が付くとソファに仰向けに倒されていた
身体の上で馬乗りになった竜胆が
見たことのない怒りの表情を浮かべて
自分を睨み付けている
「………………ふ……ざ…けんな…………………ど…うして………認めちまうんだよ…」
襟元を掴む手にギリギリと力が込められ
首が強く締め上げられていくのを
蘭はただ受け入れていた
「……………本当に悪いと思ってんなら……一生黙ってろ……」
頬の上にポタリと雫が落ちてきた直後
襟元が解放された
「………レイナを穢したこと…………絶対に許さない…」
震える声でそう言うと
竜胆は立ち上がり、そのままリビングを出て行く
喉を押さえて咳き込む蘭の耳に
真っ暗な廊下から
ドアの閉まる音が聞こえた
「……」
残された蘭がのろのろと身体を起こすと
頬の上の雫が静かに伝い落ちていった