第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
一緒に住み始めてからのレイナは
マンションに居る時間のほとんどを竜胆の部屋で過ごしていた
同居の蘭に遠慮しているのだろうと思った竜胆が、共用部分であるリビングに誘っても
彼女は『竜胆の部屋の方が落ち着くから』と言って頑なに断った
キッチンや廊下などで
偶然、蘭と一緒になった時のレイナの態度がぎこちないような気がして
竜胆は、心のどこかで漠然とした不安のようなものを感じながらも
敢えてそこから目を逸らしながら生活していた
そして今夜
再会して初めて、ベッドの中でレイナに触れた
その時の彼女の反応が
竜胆の不安を確信へと変えたのだった
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物心ついた時から
ひとつ年上の蘭は、ずっと竜胆に甘かった
そして" 兄弟の絆は何よりも特別だ " という口癖通り
どんな時でも彼は、弟の絶対的な味方だった
でも、それと同時に蘭は
弟の物に対して、全て兄である自分にも同じ権利があるかのように振る舞う所があった
幼い頃から
竜胆に友達ができると
まるで自分の友人のように相手と接したし
竜胆が気に入って買った物や
誰かにもらって大切にしていた物も
全部2人の持ち物のように扱った
携帯の中身も勝手に見るし
届いた手紙も普通に読む
そんな生活に慣れきって当たり前になっていた竜胆にとって
レイナは生まれて初めてできた
" 自分だけの存在 " だった
彼女はいつも側に寄り添って
竜胆だけを見つめてくれた
何度ケンカしても許してくれたし
前科があることを聞いてもついてきてくれた
竜胆のことを心から愛し
その気持ちを繰り返し伝えてくれた
けれど
兄と共に天竺へ入ることを決めた竜胆は
チームの目指す方向を聞いた時
この先進んで行く道に、レイナを連れてはいけないと思った
必死に夢を追いかけている彼女を大切に感じていたからこそ
心臓を引き裂かれるような苦しみに耐え
自分から別れを告げたのだった