第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
レイナの様子が落ち着くと
竜胆は言った
「……ねぇレイナ……後ろ向いて?」
『………こう…?』
レイナはモゾモゾと身体を回した
「……少しだけ……抱きしめてもいいか…」
『……えっ………ぁ……うん…』
小さく頷いた背中を
竜胆は優しく抱きしめた
レイナは一瞬身体をこわばらせたけれど
すぐに力を抜いた
『……ぁ………これ……』
「…思い出した…?」
『……竜胆の部屋に泊まった時……よく…こんな風にして欲しいってお願いしたよね…』
「…ウン……その割にレイナ…いつもすぐに寝ちゃったよな…」
『……何か…竜胆が守ってくれてるみたいな気がして……すごく気持ちが落ち着いたの…』
背中から回された竜胆の手を取り
指先を絡める
『……あったかい…』
「……」
『……………竜胆…………今日…このまま眠ってもいい?』
「………ウン………いいよ……………おやすみ…レイナ…」
耳の後ろに鼻先を埋めると
記憶の中にあった懐かしい香りに包まれていく
『……おやすみ……竜胆…』
自分の名前を呼ぶ愛しい声を聞きながら
竜胆は
深く息を吸い込み
静かに目を閉じた
スウスウという静かな寝息に合わせて規則的に上下している細い肩を、腕の中から解放した
レイナを起こさないようにベッドから抜け出し、部屋を出た竜胆がリビングへ向かうと
いつの間にか帰宅していた蘭が、ソファで酒を飲みながらタバコを吸っていた
「……おかえり兄貴…」
「…んー…」
コの字型の広いソファ
空いている場所はいくらでもあるのに
竜胆は蘭のすぐ隣に座ると、小さくため息をついた
「……眠れないのか?」
「………うん……」
蘭はそれ以上余計なことを聞かず
ただ黙って琥珀色の液体が入ったグラスを傾ける
こんな時竜胆は
やはり自分の一番の理解者はこの人なのかも知れないと思ってしまう
静かな部屋に
時間だけが流れていった