第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
その夜も竜胆は
自室のベッドに並んで横になり
明かりを消した部屋の天井を見上げながら、思い出話の続きを聞かせた
この日の話題は
レイナ個人のことだった
「…大きな大会で優勝した時、結構ニュースになったんだ……雑誌なんかにも特集されたの…オレも読んだよ。…その後、レイナはプロのダンサーとしてアメリカに行ったって噂で聞いた」
『…噂…?』
「……ウン……その時はもうオレ…レイナとは別れてたから…」
『……ぁ…』
「……オマエが夢を叶えたことを知った時……すっごく嬉しかったのを覚えてる…」
『……』
「……怪我して日本に帰って来たことを聞いたのは…ずいぶん後になってからで……すぐに調べたんだけど…帰国してからのことはよく分からなかった…」
『……ぇ………私を…探してくれたの…?』
「…うん………ぁ……探し出して会おうとか思ってた訳じゃないんだ……ただ…レイナがどうしてるか心配でさ………フッ……自分から別れたくせに…女々しいだろ…」
『……竜胆…』
「……それにしても…思い返してみるとさぁ……オレ、レイナに全然彼氏らしい事なんてしてやらなかったよな………本当、ゴメンな…」
『…っ…そんなことない……付き合ってた頃のことたくさん教えてもらって…改めて思い出したの………私……竜胆のこと大好きだった……一緒に居られて…すごく幸せだった…………別れた時は……本当に…悲しかったよ…』
その言葉に視線を向けると
レイナの黒い瞳と目が合った
「……レイナ…」
出会った時から
真っ直ぐに夢を追いかけていた彼女に惹かれ
"人を好きになる"という気持ちを
生まれて始めて知った
レイナと居ると
飽きるほどに見慣れた六本木の景色が
全く違うものに見えた
刃向かってくる奴らを暴力でねじ伏せ
10代前半で前科者になった自分のような人間でも
まだ人生捨てたもんじゃないと思って生きてこられたのは
彼女のおかげだった
自分の部屋の狭いベッドの上で
始めてひとつになった夜
『私は竜胆だけのものだよ』
そう言ってくれたレイナに
のめり込むように夢中になった
失うことを考えただけで
頭がおかしくなりそうなくらい
彼女のことを
心から愛していた