第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
梵天という組織に身を置いている蘭と竜胆の生活は
毎日とても不規則なものだった
身体を休めると言っても
車の中で仮眠を取ったり
徹夜明けに事務所へ戻り、そのまま倒れ込むようにソファで眠ってしまうようなことも当たり前のようにあった
けれど、レイナがマンションに来てからの竜胆は
なるべく毎日自宅へ帰り、会わなかった時間を埋めるように彼女の側で過ごした
しきりに過去を知りたがるレイナに
竜胆は「一度に話しても混乱するだろ」と言って
付き合っていた頃の2人のことや彼女自身のことを
眠る前の時間を使い、少しずつ話して聞かせた
大きなベッドに並んで横になり
楽しそうに思い出話をする竜胆の穏やかな声を聞いているうちに
レイナは徐々に記憶を取り戻していった
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プロのダンサーを目指していたレイナは
六本木のライブハウスで定期的にジャズを歌っていた母親のことを待ちながら
よく路上で練習をしていた
ある夜
ロアビルの近くでクラブ帰りの酔っ払った団体に絡まれている所を、偶然通りかかった竜胆に助けてもらったことがあり
それがきっかけで、2人は言葉を交わすようになったのだった
六本木の頂点に君臨し、周りから恐れられている存在だった竜胆は
始めの頃、彼女のことを年上だと思っていたらしい
時折見せる天性の甘え上手なところと、普段の彼とのギャップに
レイナは次第に惹かれていき
後になって、同じ年でしかも自分の方が少しだけ誕生日が早いことを知った途端、急にお兄さんぶった態度を取るようになった竜胆に
なおさら母性本能をくすぐられた
些細な理由でケンカした時
六本木中を探しまわって自分の所へ謝りに来た彼に想いを告白され
2人の関係は、恋人同士へと変わっていった
一緒にいると安心できて
彼の前では心から笑えた
この先もずっと、側に居たいと思っていた
それなのに
ある時を境に急に竜胆はレイナに冷たくなった
どこかのチームに入ったという噂を耳にして
それが原因なのかも知れないと思った
それから少しして
別れを切り出してきたのは彼の方だった
理由を聞いても話してくれず
そうしているうちに竜胆は、死亡者が出るほどの大きな抗争の中心メンバーとして捕まってしまったのだった
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