第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
" レイナを自分達の住んでいるこのマンションに引き取り、一緒に暮らしたい "
竜胆は蘭にそう頼んだ
「……レイナ…近いうちに今の部屋引っ越すって言ってて……せっかく会えたのに遠くに行って欲しくないんだ……身体のことも心配だし………近場に仕事が見つかって、生活が安定するまでの間だけだから…いいだろ、兄貴」
「……」
「……頼む……オレ…アイツの力になってやりたいんだよ…」
手を合わせて頭を下げる弟に
蘭が逆らえるはずもなかった
「……分かった…」
微笑んで了承すると
竜胆は「ありがとう」と言って顔を輝かせた
心から嬉しそうな弟の笑顔を見て
蘭との間に何があったのかを
レイナがまだ伝えていないことを察した
「……」
これ以上、兄弟の間で隠し事をするのは気が引けたが
久しぶりに見た竜胆のこんな笑顔を曇らせるようなことを自分から敢えて言い出す気にもならなかった蘭は
とりあえずしばらくはこのまま黙っていようと決めた
それからすぐに
3人での暮らしが始まった
一緒に暮らすなんて絶対に無理だと断っていたレイナだったが
竜胆は半ば強引に説得して、とうとう彼女を自宅へと連れて来た
全てが他人の持ち物のように思えて、母親と住んでいた家の荷物をほとんど処分してしまったレイナの引っ越しは
スーツケースをひとつ運んだだけで終わった
竜胆の部屋に荷物を置くと
レイナは言った
『……甘えてしまってゴメンなさい……なるべく早く仕事も部屋も探すから…』
「そんなに焦らなくて大丈夫……身体のこと一番に考えて…ゆっくり決めていけばいいよ」
『……竜胆………どうもありがとう。……しばらくの間、よろしくお願いします』
「…何だよ、よそよそしいなぁ……オレとレイナの仲だろ?…昔みたいに、何も遠慮なんかしなくていーって…」
『……ねぇ竜胆………私…そんなに厚かましかったの?』
顔をひきつらせたレイナの言葉に、竜胆は吹き出した
そんな竜胆を見て、レイナもやっと笑顔になった
2人の笑い声が、明るく部屋に響いた