第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
それから
何年経っただろう
梵天は
もはやどこにも逃げ場がないくらいの
大きな組織に成長してしまった
こんな風に笑顔で酒をくみ交わしていても
みんな腹の中では何を考えてるか分からない
けれど
自分の側にはいつも
心から信じられる兄がいた
(……それだけでも……オレは恵まれてる……)
大きな手で頭をクシャクシャに撫で回されながら
竜胆は素直にそう思った
結局、飲み会がお開きになったのは
2時を過ぎた頃だった
一台の車で帰ろうとした竜胆に
蘭は「寄るところがあるから別々の車でいいか?」と聞いた
数人いる女のうちの誰かの所だと察した竜胆は了解し
そのまま自分の車を部下に運転させて帰った
そして
蘭は自身の部下を帰すと
タクシーを呼び、レイナのマンションへ向かった
真夜中だというのに
彼女は喜んで迎えてくれた
玄関で抱きつかれ
挨拶代わりのキスをする
そのままベッドに流されてしまいそうな気持ちを堪えて
蘭は「話がある」と言った
酒の勢いを借りるなどという卑怯な考えに頼ったつもりだったのに
今夜はいくら飲んでも少しも酔えなかった
いつになく真剣な表情の蘭を前にして
レイナは不安そうに訊ねた
『……どうしたの………何か…あった…?』
「……」
『…………竜胆…?』
レイナから弟の名前で呼び掛けられた蘭は
覚悟を決めた
「…………オレは………竜胆じゃない……」