第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
ふと、その場に違和感を感じた蘭が周りを見渡すと
彼女の部屋が殺風景なくらいにスッキリしていた
「……」
『……ぁ……仕事クビになっちゃったから、引っ越そうと思って色々処分したの。…大きいものは近いうちにまとめて持っていってもらうつもり……どうせ馴染めないなら…全く新しい部屋の方が気分的にも楽になれそうだから…』
「……あてはあるのかよ…」
『…ネットで何件か見つけた。…都内にこだわらなければ結構安いところもあって…』
「は?…オマエ東京離れる気か?」
思わず声が低くなる
『……そうした方がいいのかも…って……少し思ってる…』
「……」
『…アナタは…どう思う?』
「……そんな事何でオレに聞く…」
『…っ……そう…だよね………別に…どっちでも関係ないか…』
悲しげに俯く彼女に
蘭は何も言えなかった
『………ねぇ……最後にひとつだけ、お願い聞いてくれない?』
"最後"という言葉に
蘭は頬がこわばるのを感じた
「…何だ…」
『……クローゼットの奥から古いレコードがたくさん出てきて……何か思い出せるかと思って色々聞いてたら…一曲だけ気になる曲があったの…』
レイナはそう言いながら
床の上にじかに置かれたプレーヤーのスイッチを入れると
回り始めたレコード盤の上にそっと針を落とした
スピーカーから流れてきたのは
古臭いジャズバラードだった
タイトルまでは知らなかったが、ある程度は有名な曲なのだろう
低音でも艶のある、この女性ボーカリストの歌声を
蘭は大昔にどこかで聴いたことがあるような気がした
レイナは蘭の前に立つと
彼の肩に手を掛けた
『……一緒に…踊って?』