第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
─── 数日後 梵天・事務所 ───
「…兄貴、最近ひとりでどこ行ってんの?」
単独で外出する機会が多くなった兄のことを
竜胆は不思議に思っているようだった
「んー?どうした竜胆…にーちゃんの事、そんなに気になんのかぁ?」
「…っっ別に!…そういう訳じゃないけど…ここんとこ別行動多いから……帰りも…遅い時増えたし…」
スネたような顔で口ごもる姿を見て
かわいい弟だと蘭はしみじみ思った
(…レイナと病院で会ったのがオレじゃ無くて竜胆だったら…2人は今頃ヨリを戻してたんだろうか…)
別れたことを後悔しているような彼女の言葉を聞いた時
そんな考えが頭に浮かんだ
あの頃
同居している蘭の存在など全く目に入っていないかのように
竜胆とレイナはリビングのソファの上でピッタリと寄り添って
よくくだらないテレビ番組を見ながら無邪気に笑っていた
ひとつのグラスで飲み物を共有し
最後に飲んだ方がキッチンへ行って注いでくるきまりなはずなのにと、そんな些細なことでさえも言い合って
ジャンケンで決めようだの
くすぐって先に笑った方が負けだのと賑やかにじゃれ合う2人を
側で雑誌を読んでいるフリをしながら盗み見るのが
蘭は好きだった
「チームなんていらない」と
兄弟2人だけで六本木を仕切っていたあの頃が
思い返せば1番幸せだったような気がした
初めてレイナに"竜胆"と呼ばれた時に
蘭がすぐに真実を打ち明け、2人を引き合わせていたら
あの幸せな時間の片鱗くらいには
また出会えていたのかも知れない
でも
それにはもう
何もかもが遅すぎた
かけ違えたボタンから目を背けたまま、何ともない顔をして暮らしていくのが
今の蘭にとっては一番無難な道に思えた