第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
花束を抱え病室に通っているうちに
蘭とレイナの距離は少しずつ縮まっていった
昔話を繰り返していれば、そのうち記憶が戻るかも知れないと思っていたが
彼女がそれ以上何かを思い出した様子はなかった
正体がバレることのないまま会話を交わし、視線を合わせ、微笑む顔を見る度に
彼の中のモヤモヤとした感情は次第に大きくなっていった
事故で負った外傷がある程度良くなると
記憶障害の方は日常生活に支障はないだろうと判断され
彼女はベッド数の不足を理由に退院させられてしまった
自宅へ戻ったと連絡を受けた夜
蘭は住所を教えられたマンションにレイナを訪ねた
リビングへ案内されると同時に唇を塞ぐと
彼女は一瞬驚いたような顔をした
構わず舌を差し込んで
口腔を犯す
『……っ………んぅ……』
深いキスを受け入れた後
レイナは困ったように眉根を寄せて微笑った
『……もぉ…どうしたの突然……ビックリさせないで…』
冗談混じりに咎められて
蘭はこれまで
余計な言葉を口にする女が嫌いだったことを、ふと思い出した
行為の最中は特に
女が無駄口をたたいた瞬間、イラついて手が出るか
気分が萎えて追い出しているかのどちらかだった
「…家に呼んでおいて今さら何言ってる…」
『……だって…知らなかったの……アナタがそんな…』
そこまで言って
レイナは口をつぐんだ
勝手に話しだした上に
言いかけて途中でやめる
普段の蘭ならとっくにキレているところだった
けれど
この時の彼は
彼女の言葉の先が聞きたくなった