第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
『記憶を取り戻すために、昔のことを聞かせてください。…どんなことでもいいんです』
女に頼まれ
蘭は自分の過去を辿った
六本木 "狂極" との2対2のタイマン勝負で初めて人を殺し、年少へ入った灰谷蘭と灰谷竜胆の兄弟は
武藤泰宏、望月莞爾、斑目獅音と出会い
黒川イザナを大将と認めた
そして、数年が経ち
塀の外へ出る頃には、6人は"極悪の世代"と呼ばれ
周りから一目置かれる存在になっていた
レイナと竜胆が出会った時期は、多分その頃だった
年少を出た後、蘭と竜胆は親から与えられた六本木のマンションに兄弟2人きりで暮らしていて
レイナはその部屋によく遊びに来ていた
兄である自分が同じ空間に居ても、お構いなしに女とじゃれ合う竜胆に半ば呆れながらも
他では絶対に見せない弟の幸せそうな顔に
蘭は微笑ましいような、それでいて少し寂しいような気持ちになったものだった
言うまでもなく
竜胆はレイナにベタ惚れだった
けれど、竜胆には時々
蘭のように長く側に居る相手にしか通じないような、複雑な愛情表現をする癖があった
自他共に認めるほどブラコンの蘭に言わせれば、そのツンデレ加減こそが弟の愛すべき部分なのだが
まだ若かった彼女には、竜胆の一見突き放しているようにも取れる言葉や態度の裏に隠された本音を汲み取るのは少し難しかったのだろう
2人はよく口喧嘩をして
涙を堪えたような顔をしたレイナが『もう別れる』と言って部屋を出て行くこともしょっちゅうあった
どんなに言い合いをしても
竜胆とレイナは何日か経つといつの間にか仲直りをしていて
蘭はまた、リビングでイチャついている2人を横目で見ながら小さくため息をつく
そんな日々が当たり前のようになっていたある日
イザナから「時がきた」と連絡があった
"喧嘩屋・鶴蝶"と名乗る古くからの側近を従えて現れたイザナは
"天竺"という新しいチームを作ると言った
そして
「いつか、みんなで集まろう…その時まで……もっと極悪[きわめ]ろ」そう年少で言っていたイザナとの約束の下、極悪の世代は集結し
灰谷兄弟も四天王として天竺に加入したのだった