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裏夢・短編 詰め合わせ【東リベ etc.】R18

第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟





女の状態が落ち着くと
主治医は回診があると言って病室を出て行ってしまった


「…じゃあ、オレもそろそろ行くワ…」


蘭がそう言うと
女は寂しそうに表情を曇らせた


『……ハイ……ぁ……さっきは急に呼び止めてごめんなさい…』

「…いや……早く記憶が戻るといいな…」

『…ありがとう…』

「……」




(…厄介ごとに巻き込まれるのはゴメンだ…)


早くこの場を立ち去ろうと
病室のドアに手を掛ける



『………灰谷……竜…胆…』

「……」

『…思い出したんです…アナタの名前…』


振り返ると
女は涙をいっぱいに溜めた瞳で蘭を見ていた


『……別れた相手に…こんな事を頼むのは図々しいかも知れないけど……もし良かったら…また会ってもらえませんか?……一緒に居ると…もっと何か思い出せそうな気がするんです…』


視線を逸らすようにして
ドアに向き直る


「……」

『……竜胆……お願い…アナタしか頼れる人が居ないの…』



こんな何の得にもならないような頼みを
聞いている程ヒマじゃなかった



でも
何故か蘭は

" 自分の名前は竜胆じゃない。さっきの話は冗談だった "とは、彼女に言わなかった




「……分かった。…近いうちにまた来る…」


背中を向けたままそう言って
振り返らずにドアを閉めた





足早に階段を降り、駐車場へ向かうと
運転席に居た部下が慌てた様子で車の外へ出てきた


「…どうした…」

「…ぁ……いえ……お帰りが遅かったので何かあったのかと…」

「…別に…何もない…」

「…そう…ですか……失礼しました…」


後部座席のドアを開けながら
部下はホッとしたように続けた


「良かったです……蘭さんが向こうから来た時、一瞬…何かから逃げているように見えたんで…」

「……」









数日後
約束通り彼女の病室を訪ねた


手渡した見舞いの花束に嬉しそうに鼻先を埋めているレイナを
蘭はどこか複雑な気持ちで見つめていた








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