第8章 東京卍リベンジャーズ・乾青宗
乾が時間より少し前に裏口から外に出ると
ちょうどレイナがドアを閉めている所だった
『……ぁ……ピッタリでしたね…』
「うん。…お疲れ様」
昨日と同じ道を
2人は並んで歩き始めた
『…さっきは差し入れありがとうございました……ポケットに入れておいたら…すごくあったかかったです…』
「…そっか。良かった」
『……それと、今日も送ってくれて…ありがとうございます………乾さんて…本当に優しいですよね』
「………そんなこと…ないよ…」
『…ぇ……だって…こんなに優くしてくれてるじゃないですか…』
「……そう……かな……」
『…ハイ……乾さんは優しいです……初めて会った時から…ずっとそう思ってましたよ?』
「……」
(…どうしてこの子と居ると…こんな気持ちになるんだろう…)
柔らかな笑顔を見つめながら、乾は考えていた
レイナの声や眼差しは
冷え固まった心の中をあたためてくれる
彼女の言葉や笑顔が
乾の全てをそっと包み込んでくれるような気がした
レイナと一緒にいると、乾はとても心地良かった
その心地良さをずっと感じていたくなる
無意識のうちに自分がレイナを求めていたことに
乾は気が付いた
(……でも…)
それと同時に
モヤモヤとした思いが湧きあがってくるのを感じた
"オレは彼女にふさわしい男じゃない"
いくら気持ちをあたためてもらっても
冷えきった心の中を溶かしてもらっても
自分はもうとっくに汚れてしまっている
道路の隅でベチャベチャに溶けかけた醜い灰色は
積もったばかりの白には戻れないのだ
「……」
その時
乾は左側の袖をクイと引かれたような気がした
見ると、隣を歩いて居たはずのレイナが立ち止まり
乾の服を摘んでいた
「……?………どうしたの?」
『…………乾さん…………また…寂しそうな顔してますよ?』
「……」
差し出された彼女の右手を
乾はすがるような気持ちで掴んでいた