第8章 東京卍リベンジャーズ・乾青宗
再び並んで歩き始めた2人の話題は、専らワタルのことだった
話の中で、レイナが『ワタルが店を継ぐ気になってくれたのは乾さんのおかげだって、両親も私もすごく感謝してるんです』と言ったので、乾は驚いた
他人に迷惑をかけるようなことを散々やってきた自分に
ワタルの家族がそんな印象を持っているとは夢にも思っていなかったからだ
「…オレ、感謝してもらえるような事なんて…何もしてないけど…」
俯いた乾に、レイナは言った
『……ワタルが…前に話してたんです………高校には行きたくない…かといって就職なんてダサいこともしたくない………どこかの組織に入れば……まだまだ今までみたいに格好つけて生きていけるんじゃないか…って考えてた時に… " カタギの世界で真面目に働いてるヤツの方が…よっぽど格好いいだろ " って…乾さんから言われたんだ…って…』
「……」
そんなことをワタルに言った記憶が
乾には確かにあった
けれど、それは何か違う話の流れからであって、その時のワタルがどこかの組織に入ろうかと考えていたことなど、乾はまるで知らなかった
(……昨日は…" 未練は無かった " って言ってたけど……突然のチーム解散で…アイツも色々悩んだんだろうな………きっと…他のヤツらだって…)
黒龍再建の夢を捨ててはいなくても
" 今はまだその時ではない " 乾はそうも考えていた
ドラケンとの間で、一緒にバイクショップを始めようという話が持ち上がった時
乾の中には " 黒龍時代から自分に着いて来てくれた連中の居場所を作りたい " という思いもあった
「カタギの世界で真面目に働いてるヤツの方がよっぽど格好いい」
ワタルに言ったその言葉は
一度は見失いかけた夢をなんとかもう一度掴もうと手探りでもがいていた自分自身を
無理矢理納得させるための言い訳だったのかも知れない