第8章 東京卍リベンジャーズ・乾青宗
『あ、ワタル…呼んで来ますね』
ワゴンを離れようとしたレイナを乾は止めた
「ううん。今日は買いに来ただけだからいいよ」
『えー!ありがとうございます♪……ホールケーキでいいんですか?』
「うん。2個ください」
戸惑ったように乾の顔を見ながら
ドラケンが小声で言った
「は?」
「?」
「イヌピー…1個でいーだろ?…そんな食えないだろ?」
「…俺食える」
そう言って財布から金を出した乾を
ドラケンはポカンとした顔で見つめた
『どうもありがとうございます♪』
乾の手の上に笑顔でお釣りを乗せる
レイナの赤い指先は、氷のように冷たかった
四角い箱を下げた2人が店へ戻る途中
目の前に白いものが落ちてきた
「…お……やっぱ降ってきたな…」
ドラケンの声に
乾は顔を上げた
一面の真っ黒な夜空から白い雪が次々に舞い落ちてくる
小さな雪の粒は
アスファルトの上でフワリと消えていった
「……」
乾が立ち止まり、後ろを振り返ると
ワゴンの前に数人の客が並んでいるのが見えた
『ありがとうございました』『いらっしゃいませ』
笑顔で客の応対をするレイナの声が
雪の中であたたかく響いてくる
「…ホワイトクリスマスなのに…ヤロー同士でケーキかよ…」
低い声が聞こえ、前へ向き直ると
バイクショップへ入っていくドラケンの大きな背中があった
「……フッ……そう言うなって…」
乾は苦笑いすると、ドラケンの後へ続いた