第8章 東京卍リベンジャーズ・乾青宗
翌日のD&Dは予想通り朝からバタバタと忙しく
ようやく一段落した頃には既に閉店の時間になっていた
「あーー…今日はマジで忙しかったな…」
「…お疲れ……表の看板入れてくる…」
「…頼む…」
乾が外に出ると冷たい空気が頬を刺した
店の前に置いた看板のコンセントを抜き
キャスターを転がしながら店内に運んでいると
微かなクリスマスソングと共に、どこからか女の声が聞こえてきた
『ありがとうございました』
声の方を向くと
数件隣の店の前で、レイナがケーキを売っているのが見えた
「……」
看板を押しながら店内に戻った乾は
しゃがんで工具を片付けているドラケンに言った
「……ドラケン……ケーキ、食わねぇ?」
「おー、そうだな」
ドラケンはそう言うと笑顔で立ち上がった
店の外に出た2人は
ケーキ屋の方へ歩いていく
「あ〜…寒ィ。雪でも降りそうだ…」
「…夜中に降ったら凍るな……ドラケン…明日の朝、単車ヤバいかも知んねぇぞ」
「…だな。…今夜はコッチに泊まるか…」
店頭に置かれたワゴンには、ホールケーキの箱が幾つか並べられていて
サンタクロースの帽子をかぶったレイナがその奥でテキパキと動いていた
ワゴンの下に置かれたスピーカーからは
軽快なクリスマスソングが流れている
「…ワタルん所のケーキ、結構有名なんだってな…いつだったかパーが言ってた…」
「…そうなんだ…」
返事をしながら乾は
ドラケンとパーちんがケーキの話をしている所をボンヤリと想像していた
「……」
そうしているうちに前の客の会計が終わり、自分達の順番が来た
『あ、こんばんはー♪』
「お疲れ。レイナちゃん、こんな寒みーのにずっと外なのかよ」
『…中は予約の受け渡しとカットケーキの販売だけで…ウチの店狭いから仕方なく』
レイナはドラケンにそう答えると
真っ赤になった鼻をスンとすすって笑った