第8章 東京卍リベンジャーズ・乾青宗
「い、乾さん!ドラケンさん!お邪魔しました‼︎」
「おー」
「またな」
ワタルは慌てて店の外へ出て行った
『もー!いつの間にかちゃっかり居なくなって!…今夜は明日の準備で大変なんだからね!』
「…るせーなぁ……姉ちゃんだって今日来んの遅かっただろ?」
『私は仕事終わってから来てるの!ワタルと一緒にしないで!』
ガラス越しに2人のやり取りが聞こえる
「…あーあ…」
「…クスクス…」
店内からの視線に気付いたワタルの姉・レイナが、笑顔でペコリとお辞儀をしたので
ドラケンと乾も挨拶を返した
『ホラ!早く行くよ!』
「うわっ!わかったから引っ張んなって…ちょ、姉ちゃん!」
レイナに引きずられるようにして
ワタルの姿がウインドーから消えていく
「……レイナちゃん手伝いに来てんだな……そーいや明日は24日かぁ……納車もあるし…ウチも忙しくなりそうだ…」
「…そうだな……朝、少し早めに来るよ…」
「…おー…オレもそーするワ……………フッ………それにしてもワタルのヤツ……相変わらず姉ちゃんには敵わねぇみてーだな…」
ドラケンの言葉に
乾は笑って頷いた
まだ、ドラケンと乾がバイクショップをオープンさせたばかりの頃
中学卒業後は進学せずに両親がやっているケーキ屋の跡を継ぐと決意し、父親の下で少しずつ修行を始めていたワタルは
コッソリ店を抜け出しては、しょっ中 "D&D" を覗きに来ていた
そんな弟のことを連れ戻す役目を担っていたのが、ワタルよりひとつ年上の姉のレイナだった
ドラケンと同じ年のレイナは
高校の放課後にバイトとして実家の店をよく手伝っていた
何度か顔を合わせるうちに
レイナはドラケンや乾とも少しずつ会話をするような仲になっていったのだった
ワタルとレイナを見ていると
乾は、若くして亡くなった自分の姉・赤音と過ごした頃のことをよく思い出した
小さい時からヤンチャだった自分を心配して
優しくたしなめてくれた5歳年上の姉
もう2度と聞くことのないあの声を思い出し
寂しいような、でもとてもあたたかい気持ちになるのだった