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anthology

第1章 私の物語


ちゅんちゅんと雀の鳴き声が外から聞こえる。
ホテルの時計は午前9時24分。

「んっ…9時…って朝っ!?!?!?」

お母さんお父さんに何もいってないし…
承太郎さんもいない!!

「起きたか棗。ご両親には昨日の夕方ごろに連絡した。心配することはない。」

「ここここここ、こうなることを事前に想定してたってことですか!?」

するとコーヒーカップを置き、じーっと私を下から舐めるような視線で見てくる。

「朝からやる気か。いいぜ」

「ち、ちがいます!!もう私承太郎さんとはしませんから!」
「妻子持ちだからか」
「当たり前じゃないですか!
ただでさえ罪悪感すごいのにまたしちゃったら私本当に嫌いになります承太郎さんのこと。」

掴んだシーツをギュッと胸元で握りしめ、承太郎さんとしてしまったこと、それが不貞行為で今までの自分の考えがぐちゃぐちゃになってしまい目頭が熱くなってしまった。
しかも初めてがこんな風になってしまうなんて。

「俺はお前を大切に思っている」
「っつ!」

承太郎さんは別途の端に腰をかけ、私の顎を掴んだ。
私はこの言葉にすごく弱い。そんな綺麗な色っぽい顔で見つめないでほしい。
そして何度も深く溶けるようなキスを落とし何度も角度を変え、シーツの上から優しく揉まれる。
すでに何個か赤い跡がつけられていたが、もう一つ、もう一つと承太郎さんは跡をつけていく。
自分のものと言っているようだったが、昨日みたいな荒々しいものではない。優しくてどこか切ない。
幸せだけど、でもこれは自分が求めていたものではない。
私は承太郎さんのものにはなれない、そして承太郎さんも私のものではない。
私の肌に顔を埋める承太郎さんの髪を撫でる。
石鹸のようないい匂いがふわっとかおる。キュッと胸の奥が痛んだ。
カッコ良くて大好きな承太郎さん。でも…

「ダメです…好きです…好きなんですけど、ダメです。ちゃんと奥さんと向き合ってください…。」

私はそう言って脱ぎ散らかった服やアクセサリーを回収して


「承太郎さん、愛していました。Stammi bene(さようなら)」



承太郎さんの部屋を後にした。








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