第7章 新年早々出久くんとイチャラブ姫始めしたいなと思う話
大晦日、星降る冬夜の下。人の女子高生がおぼつかない足取りで夜道を歩いていた。
やられた…。今晩は思いっきし部活仲間の自宅で年末年始のパーティーとのことで参加したは良いもの、狡賢い先輩方に酒を振舞われしまったのだ。いや、仕込まれていたと言った方が正しいだろう。何の疑いもなく色とりどりのソーダやらジュースやらを何杯も飲み干し、時間が経つに連れて身体が妙に火照っていることに気付いた途端、もしやこれはアルコール入りなのでは?と厭らしい笑みを浮かばせていた彼らを見てすぐに悟れた。
最後の日にパーっといきたい気持ちは分からなくもないが、未成年の目を盗んでお酒を飲ませるとかどういう神経してるんだ?帰り際ハングオーバーにでもなったら只ごとではない。
『っ“……』
そして平然を装って空気を吸いに行ってくると仲間に言い残し家を出た先、理由なく海辺公園に赴いたのだ。心配になった同志達からの通知音がポケットの底でずっと鳴っているが、気分がよろしくないあまり全部スルーしていた。
本当はもう帰った方が良いのだろうけど、あろうことか自宅の鍵や財布やらの私物があの家に置いてきてしまった為帰宅しようがない、親も仕事関係で同じく外出中だし…ついていない。パリピ達のアジトに戻るかどうかは後に考えて、ひとまず酔い覚ましに何か良いことでも考えて気を紛らわそう。お花でも、好きな映画でも何でも……。
『……』
冷たい潮風に当たれながらクラクラする頭を押さえ、秘多が街灯にもたれ掛かる。潤んだ目を閉じ、暗がりの中からふと現れるの決まってあの人の面影。いたいけな笑顔をこしらった顔はどのヒーローよりもいきいきしていて多くに活気をもたらしてくれる。いや多くは大袈裟かな…、恋慕の情がそう錯覚しているだけかもしれない。
とある都市の壊滅を含め物騒な事件が増えている今、暫く会っていない。機会があればと12月のどこかでいつか渡そうと思っているプレゼントは待ち遠しく机の上で待機しているが、結局そのいつかは訪れることはなくずっと置いたまま埃被る。