第12章 疲れ勃ちした出久くんとヤリたい放題のバカンスに沼る話
敵連合、異能解放軍、超常解放戦線、AFO、死柄木——。
どれも聞き齧った程度の知識しかなかったとはいえ、友人がまさかそんな命の危機に晒されるような状態におかれていたとは……。緑谷の話にしばらく耳を傾けていた秘多が深刻な表情を浮かべて、息をついた。
『そう、だったんだ……君は自ら雄英を——教えてくれてありがとう』
「他にまだ説明しきれていない部分があるんだけど……」
ひっそりと佇む湖畔の家の内装を、他所ながら見ていた緑谷が返すと、秘多は大体のことは掴めたといった様子で再度礼を口にした。ローテーブルの上には手付かずのお茶が二つ。そして二人掛けのソファに自分たちが座っている。
最初は、休憩がてら些細な話ができればと思って、彼をここへ招き入れた。けれど、今の緑谷の心境や風貌を目の当たりにすればするほど、やはり疑問は出てくるもので。どうしてこんなボロボロになるまで都市内を回っていたのか。しかも護衛や増援なしに、たった独りで……。
こんなにも辛そうなのに、独りで闘わなければならない理由があるのだろうか。或いは、他者が関与してはいけない何かが……。
結局、居た堪れず思い切ってその真意を確かめることにしたのだ。友人だからと言って秘密を打ち明けてくれるとは端から思っていない。正直、ダメ元の試みではあった。しかし、緑谷はヒーローに縁のない自分にも分かりやすく、これまでの経緯を話してくれた。
任務を妨害するようなことをして、不快に思われても仕方ないと思っていたけれど、彼はそんな様子は見せず、「隠しててごめん」と何度も申し訳なさそうにしていた。
『ううん、謝らないといけないのはむしろ私の方……。君のこと、知りもしないで勝手なことして…』
「密ちゃんをあのままおいてってしまった僕も悪いよ。本当にごめん……」
双方とも詫びを言い、しばし静寂に浸った。公務執行妨害だけでなく、彼の決意を問いただすようなことをしてしまった。その罪悪感に、秘多の表情が僅かに曇る。
あの時はどうしても、緑谷だけは消えて欲しくなかったのだ。あのまま動かないでいたら、自分はきっと一生ものの後悔をする。そうなるくらいなら……、誰に何と言われようと知るものか、という自暴自棄ゆえの行動だった。