第11章 シーツのストックなくなるまで出久くんに泣かされる話
「なんでも許されるからって、やって良いことと悪いことがあるよね…。密ちゃんをそんな風に扱っちゃダメだって…何度も思ったのに、僕はまたっ…」
言葉で済むものではないと自覚しつつも、緑谷は謝罪を兼ねて後悔を口にする。確かに、酷い仕打ちではあったけど、そう仕向けたのは紛れもなく自分だ。だから己のことばかりを責めないでほしい。彼が自虐を呟く度に、秘多は首を大きく横に振り続けた。
「君のヒーローでありたいって言っておきながら、守るどころか傷つけてばかりで…
嫌いになる…よね、僕のこと……」
『っ…嫌いに、なんか……』
罪悪感に苛まれ、歪な笑みを浮かべる少年の両腕が今にも離れて行きそうだった。それが嫌で、引き止めようと秘多もそっと背中に腕を回し、しどろもどろなりに彼を宥める。反応は決まりが悪そうに口を噤む程度だが、視線は逸さずに絡ませてくれていた。
『出久くんが誰よりもヒーローで、優しいの…私は知ってる。だから……いい』
「そんな…もっと怒っていいんだよっ。密ちゃんは人が良すぎるよ…」
告げられた言葉に耳を疑う。そんなことはない。先の愚行に対して心から反省したかと聞かれれば、別にそうでもないし、ずっと悪いことしてる。今だって…。
未だに自身を許しきれない緑谷をどうにか元気付けられないか、秘多が慣れた手付きで顎を掬い上げ、囁いた。
『…悪いって思ってる?』
自分は、彼を我がものにしたいだけの欲深者だ。この期に及んでも、どうすればこの状況を逆手に取れるのかとか、どんな言葉を並べたらこっちのペースに乗せられるかなど、不謹慎なことばかり画策する悪い友人なのだ。
弱いところに漬け込むように、秘多は泣き腫らした眼で相手を射ては、唇同士が触れ合わさるギリギリの距離まで顔を持っていく。
「っ!?」
唐突な仕草に案の定、緑谷は狼狽し、瞬時に後ずさろうとするも、秘多に二の腕を引っ張られてしまう。その反動で、容易くマットレスに押し遣られた彼の身体が僅かにバウンドする。
『私の為に何かしてくれたら、仲直りする…ってどう?』
「へ?」
言葉と共に捉えた傷だらけの手を優しく握っては徐に指を口に咥え、そのまま舐め始める秘多。