第6章 怒りの兄(激甘)●河田ナホヤ
ソウヤが怒ってる、とそう言うのなら怒っているのだろう。
「なんとなくだけどね。というか、“やっぱり”って何?」
ソウヤは何か心当たりはあるのか?というような顔で私の顔を見つめた。
心当たりが全くないわけではなかった。
1か月ほど前・・・
男子の新入生が私のクラスに転入してきて、その人がかなりの顔立ちの良いイケメンだった。
河田ナホヤという彼氏がいる私にとっては興味のかけらもなかったが、積極的に私に関わってくる姿に少しづつ彼に興味を持ち、教室で一緒に話すことが多くなっていった。
そしてナホヤにもその事を話した。
「転入生が来てね、すごくいい人なの。関西から来たみたいで・・・」
私はひたすら転入生との会話を話した。
ナホヤの、だんだんと怒りに代わっていく相槌に気づかず・・・
「思えばそのことかもしれない・・・って」
一連の流れをソウヤに説明すると、ソウヤは何とも言えないような表情で冷や汗をかいている様子だった。
ただ、ヤバい・・・というような顔だった。
「ソウヤ君・・・?」
固まっているソウヤの前に立つ。
「夢ちゃん、それ・・・今すぐ謝った方がいいと思うよ。」
「あ・・・うん、そうだよね。」
ソウヤのアドバイスを真剣に受け止めるが、弟ですらこんな顔をさせるほどの怒りって・・・
自分が怒らせた張本人だということは重々理解したが、会うのはとても気まずかった。
「ソウヤ君・・・一緒に来てほしいんだけど、だめかな?」
「だめだよ。」
一蹴された。
「一緒に行ってあげたいのは山々だけど。二人のことだから二人で解決しないと。」
「う・・・ん、そうだよね」
ごもっともだった。二人のいざこざにソウヤ君が巻き添えにされる理由はないと思った。
「今、家兄ちゃんしかいないし、行って来れば?先生には適当に言っておくし。」
「うん・・・」
「・・・」
ソウヤは俯く私の顔を両手で包み、見上げさせた。
「大丈夫だよ、ちゃんと謝れば許してくれるし、彼氏でしょ?」
その言葉がスッと脳に入り、私を安心させた。
そうだ。ちゃんと謝れば許してくれる。
それに大好きなナホヤ君だ。最悪なことにはならない。
私はそう自分に言い聞かせた。
「ありがとう、行ってくるね」
ソウヤは優しく手を振り返した。