第5章 夏祭り(ギャグ甘)●灰谷、河田兄弟 ※ネタばれあり
ー《ごめん、まだ電車乗れないからかなり遅れる!》
メールにはそう書かれていた。
「あらら・・・」
友達と浴衣を着て夏祭りの予定だったが、大きめの祭りの為か混雑しており、待ち合わせの時間には来れないようだった。
「適当に散策しといて・・・ね・・」
メールの最後の文章をつぶやく。
女の子一人浴衣で祭りを散策って・・・結構ハードル高いと思うんだけどなぁ。
しかもこの楽しげな雰囲気の中一人は少し寂しい。
とりあえず人の少ない鳥居付近まで行こうかな。
私は鳥居付近まで歩いていく。
「焼きそばいかがですか~?」
「お父さんあれ買って~」
と、四方八方から声が飛び交い、夏祭りらしい雰囲気が漂っている。
こうしてじっくり雰囲気を味わうのも風情があっていいかもしれない。と思い鳥居付近までたどり着く。
鳥居付近は屋台などが少なく、明かりもさほどなかった。
遠くでワイワイ騒いでいるのが分かった。
ここで友達が来るのを待っていよう。
そう思い鳥居の柱に寄りかかろうとした時だった。
「あれ?夢ちゃんじゃない?」
「お、ホントだ。よう!」
「え・・・?」
顔を上げると、同じ学校の河田兄弟だった。
クラスは違うが、私のクラスにも何人かファンがいるほど隠れた人気があった。
二人とも浴衣を着ていた。暗めのグレーで、背中には般若のような刺繍が施されていた。
いつもの制服とは雰囲気が違い、つい二人の姿に見とれてしまう。
浴衣を着ると人は2割増しでよく見えるというのは本当だったのか・・・。
「つか、お前一人?」
ナホヤが私に問う。
「あっ、ううん、友達もいるよっ・・」
一人で祭りに来たなんて寂しい人みたいに思われたくなくて、咄嗟に友達といることを伝える。
もうすぐ来るはず、と私は巾着にしまったケータイを取り出してメールを確認する。
・・・メールを見て愕然とした。
「・・・?どうしたの?」
固まっていたのかソウヤが私の顔を覗き込むようにして聞く。
《人身事故だって。今日は来れなさそう。本当にごめんね!》
謝る顔文字と、《このお詫びは必ずするから》と一言。
彼女の申し訳ない気持ちが伝わってきた。