第4章 疑心暗鬼(シリアス)●灰谷蘭、竜胆
「それで・・・これからどうするつもりですか」
「お、やっと喋ったね」
嬉しそうに竜胆が答える。
「俺らはアンタに危害を加えないよ」
そう言って蘭は私の手錠をあっさりと解いてしまう。
「・・え・・どうして・・・?」
長い長い束縛がようやく解かれた。
「女に手ぇ出す趣味はないよ。起きた瞬間に逃げ出すと面倒でしょ。」
手錠を外すとまたソファに座る。
「それに・・・もう分かっているだろうけど、アンタはこの世界じゃもう生きていけない。T組織に目をつけられた以上アンタは死ぬ思いをしながら逃げ続けるしかない。・・・この先一生・・・ね?」
・・・この先・・・一生・・・
分かってはいたことだったが、一生、という言葉が深く心に突き刺さった。
「だから、これから俺らはアンタのバックにつく。アンタの存在は完全に抹消され、年齢も名前も姿もすべて偽造され全く別人として生きるんだ。」
「・・・・何・・・どういう・・・?」
つらつらと話していく蘭に頭が追い付かず問う。
「つまり、君は俺たち梵天の諜報部員になれってこと。」
竜胆が付け加える。
「それがアンタのこれから先生きていく唯一の道。断る権利はないよ」
蘭にそう断言される。
なるほど《梵天》の名を私に明らかにしたのはこのためか・・・
初めから私の情報収集能力をかっていたのだ。
犯罪集団を追っていたのに次は犯罪集団の仲間になる・・・か・・・
生きていくにはそれしかない。
しかしバックに梵天がついているのは他の犯罪集団を追っていくうえで一番安全であった。
「・・・分かりました。・・・ではあなた方の諜報部員を引き受けます。それから、この度助けていただいたこと感謝いたします。」
私はスっと姿勢を正し二人に向き直りそう答えた。
「ふーん、えらく素直だね、もっと嫌がるものだと思ってたよ調教する手間が省けたんじゃない?兄貴」
「調教が得意な奴は他にいるだろ。こっちにおいでよ、仲間を紹介するから。」
二人はそう言い、私に手招きし、奥の部屋へと案内される。
ー私の目にかすかに宿る光に、二人は気づかなかった。