第2章 そのひと時は悲しき思い出(切)●河田ナホヤ
「あれ、傘・・・持ってたの?」
彼の手には傘が握られていた。
「あぁ、弟がぜってー忘れんなよって」
私が気になるのはそうではなく、傘を持っていたのにもかかわらず何故帰らず私といたのか、ということだった。
しかしすかさず彼は私の心を読んだように期待通り答えてくれた。
「お前と話してると楽しくてさ」
ー現在
あの時の笑顔が忘れられず、それからずっと目で彼を追っていた。
ナホヤくん。そう心で何度つぶやいたことか。
しかしあれからお互いに声を掛けることはなく私の思いばかりが膨らんでいった。
もっと話したい、もう一度あの笑顔を私だけに向けてほしい、と。