【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第53章 Epilogue ☆
安室side
正直、まだ実感が湧かない。
未だにこれは夢なんじゃないかとすら思うんだ。
今まで僕が大切に思った人はみんな僕の前から姿を消した。
リラに至っては、僕から手放したと言っても過言ではない。
けれど、リラは戻ってきてくれた。
またリラと言葉を交わせるなんて
手をつなげるなんて
触れ合えるなんて
キスができるなんて
こんな幸せなことがあっていいのか…と思うほどだ。
ポアロで嬉しそうにこの2年のことを話すリラが可愛くて愛しくて、僕は何度も隙を見てキスをする機会をうかがっていた。
そんな僕の邪な気持ちを見透かしたかのように鳩時計がもう良い時間というのを知らせる。
もうこんな時間…
このあと、どうするんだろう。
帰したくないな…
けど、再会してすぐ夜通し会いたいなんておこがましいか?
帰国したばかりで疲れているのかもしれないし。
自分の気持ちよりも相手を気遣うのは僕の良いところでもあり、悪いところでもある。
「そろそろ帰りますか。外も暗いし、送ります。
どこのホテル?」
「…え…」
僕のその質問に、リラの顔はわかりやすくどんどん曇っていく。
明らかにショックを受けているような、何か言いたげなリラの顔を見ていると、
もしかして、リラももっと一緒にいたいと思ってくれてる…?
と、嬉しい予測が頭の中に駆け巡った。
もしそうなら、ホテルまで送るよ。なんてとんでもなく残酷な言葉だ。
けれどそれに傷ついてるリラが可愛いと思うんだから僕はどうかしてるな。