【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第52章 最終章 Begin Again
もう二度と、この光景を見られることはないだろう。
アメリカでの最後のライブ、ステージ上でそんなことを思った。
グラミー賞を受賞した瞬間から、既に全て捨てて日本に帰ることを決めていたから。
トランクひとつとギターを背負って飛行機に飛び乗り、久しぶりの日本の空気を味わう暇もなく米花町に急いだ。
そして、零の姿を見つけた時、涙で視界がぼやけた。
変わってない…あの頃の零のままだ。
まるで出会った時と同じ、あの日のまま。
離れていた2年なんて、まるで無かったかのように思えた。
久しぶりに見ると、やっぱり素敵だ…
自然と目が奪われる。
こんなに魅力的なんだもん…
もう新しい彼女がいたらどうしよう。
そう思いながらも、勇気を出して零の名前を呼んだ。
零はわたしを見て、驚いたように目を丸くした。
零に会いに来たの。
零と一緒にいたいという夢を叶えに来た。
そう言うと、零はわたしの方へ駆け寄ってきて、両手を広げて力一杯わたしを抱きしめた。
折れそうなぐらい強い力の零の抱擁を受け止めるわたしは、また瞳に涙が溜まった。
こんな風に抱きしめてくれるってことは、零もわたしと同じ気持ちだった…?
零は少しだけ震える声で尋ねた。
「夢じゃないよな…」
「うん。夢じゃないよ」
夢じゃないよな?
その一言が、零もこの瞬間を待ち望んでいたことを表していた。
それが嬉しくて、嬉しくて、零の匂いを全身で感じて背中に腕を回して言う。
「零に、ずっと会いたかった」
その言葉を聞いて、零の唇がわたしの唇に重なった。