【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第52章 最終章 Begin Again
街を歩けば君の広告が至る所に張り出され、テレビを見れば君の歌声が流れない日はない。
僕はリラの姿を毎日のように目にするのに、イヤホンから流れるリラの歌声を毎晩聴いているのに、
リラからは僕の姿は見えない、声も聞こえない。
正真正銘、遠い存在のひとになった。
「あ!Lilaだ!」
園子さんがスマホを見ながら、君の名前を呼ぶ。
君の芸名は毎日のように耳に入ってくるけど、君の本名を聞くことはもう無くなった。
「Lila、グラミー賞受賞はアジア人初の快挙だって。
これは今年、レオン・シードと結婚するんじゃない?
ずっと付き合ってるって言われてるしさー」
「ちょ、ちょっと!園子!」
園子さんのスマホに映ったリラは、美しくドレスアップしてグラミー賞の会場にいた。
隣には、同時に賞を受賞した、レオン・シードがリラと喜びを分かち合ってハグをしている。
「…大丈夫ですよ。
もう2年も経ったんだ」
そう。もう2年も経った。
2年も経っているのに、僕の心は相変わらずずっとリラのことを考えてる。
毎日朝起きて1番に、リラの顔が浮かぶ。
お昼を食べると、リラは何を食べただろうと考える。
夜、眠る前
ベッドの隣にリラがいないのがとてつもなく寂しくなる。
この2年間、ずっとだ。
次の恋をしようとすら思えない。
リラと過ごした日々を思い出さない日はない。