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【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】

第52章 最終章 Begin Again




この2年でリラを取り巻く環境は僕以上に変わった。

渡米して、全米デビュー一発目はすでにビルボードチャートを独占しているレオン・シードとのコラボ。

瞬く間に時の人となった。

ラストライブのとき、金髪ショートにしたリラを見て、あぁ。僕のことをまだ想ってくれているのだと思ったけれど、リラの髪は数ヶ月であっさり伸び、僕の思い過ごしだったと悟った。

そこから、出す曲出す曲、ヒットを連発。


まさかアジア人のたった1人の女の子が、こんなにも大躍進を遂げるとは誰も想像しておらず、世界で今最もホットな女性と言われている。

この間ニュースで見た、リラのワールドツアーの映像には、リラの歌を聴いて涙するあらゆる人種のファンが映っていて、やっぱりあの時の僕の選択は間違っていなかった。

良かった。
そう思うと同時に、複雑な気持ちにもなった。

どこかで最低な期待していたから。
アメリカに渡ったけれど思うように結果が出ずに、また僕の元に帰ってきてくれるという最低な期待を。


リラに思いを馳せると、時間が一瞬で溶ける。

ハッと時計を見るともう夜の18時。
買い出しに行っていた梓さんが帰って来て、退勤したことに気付かないほど、僕の頭は相変わらずリラの事でいっぱいだった。


「あ。そろそろポアロを閉めますから」

「ほんとだ!もうこんな時間!
帰って夕飯の準備しなくちゃ!
新一、課題の続きは家でやろう?」

「あらあら。お家で2人でラブラブ課題でもやるのかしら?」

「もう!園子!いつまでそんなこと言ってるのよ!」


そんなやりとりをしながらパタパタと家路に着くのを微笑ましく見送った僕。


「ありがとうございましたー」


誰もいなくなった店内を見渡すと、あの日を思い出す。

リラと初めて出会った日も、こんなふうに誰もいなかった。

このカウンターでコーヒーを淹れてあげたのがつい昨日のようだ。


「本当に、未練がましいな。僕は。」


自分自身に呆れてそう言いながら、僕は帰る前に店の前を掃除しようと箒とちりとりを持って店の外に出た。



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