【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第51章 優しい彗星
成田空港 第2ターミナル
「18:00発 JAL058便 ニューヨーク行きをご利用のお客様は、保安検査場へお進みください」
そんなアナウンスが流れるのを聞いたわたしは、トランクを持って座っていたソファーから立ち上がった。
いよいよ、このゲートを潜ったらもう後戻りできない。
さよなら。零…
心の中でそう呟いた時
「リラ!!!」
後ろからわたしを呼ぶ大好きな声がした。
誰が呼んだのかは、声を聞いただけですぐにわかる。
それと同時にわたしの目に涙が溜まっていく。
恐る恐る、後ろを振り返ると息を切らした零がそこに立っていた。
「零…」
周りにたくさん人がいるのに、なぜかその人たちは全員モノクロに見えて、わたしと零だけに色が付いているみたいだ。
零ははあはあと上がる息を整えた後、わたしを真っ直ぐに見て笑った。
「頑張れ。リラなら、絶対に夢を叶えられる。」
「零…」
「頑張れ!」
そのまま、零に抱きついていくこともできた。
やっぱりアメリカに渡るのはやめる。そう言って、零に縋ることもできた。
だけど、わたしは頑張れと叫んでくれた零に、涙でぐしゃぐしゃになった顔で、笑った。
わたしの笑ってる顔が好きだと言ってくれたから、わたしの笑顔を覚えておいてほしい。
「行ってきます」
それだけ言うと、わたしはまた背中を向けて振り切るように保安検査場へ走った。
込み上げてくるのは、ありがとう。
そして、愛してる。
それしかなかった。
それから1時間後、わたしは、零の愛するこの国を飛び立った。
自分の夢を叶えるために。
零とまた、いつかどこかで会えることを切に願いながら。
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