【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第51章 優しい彗星
ステージから見えるペンライトの光を眺めるのが好きだった。
その光の下に、たくさんの笑顔が溢れていて、それを一人ひとり見ていくのが好き。
今も見えるこのきらめく光の中に、零はいない。
いないとわかっているのに、どうしても零の姿を探してしまう。
日本でのラストライブ、ラストの曲
今、わたしはファンのためじゃなく、零のために歌を歌ってる。
こんなわたしが、世界中の人を救うような歌を歌えるのかな?
だけど今日は許してほしい。
もう振り返らない。立ち止まらない。
わたしは、わたしの夢を叶えるために今までより全速力で走ってやる。
そんな決意も込めたラストライブ。
零のために書いた曲を歌っていると、零と出会ってからの毎日が全部まるでアルバムをめくるみたいに頭に流れた。
あたたかい、陽だまりのような日々はもう二度と返ってこないのかもしれない。
けれどわたしの目に、涙は溢れなかった。
最後の一音を歌い上げると、充実感とやりきった思いに満たされて、笑顔で客席に大きく両手を振った。
「みんな、今日は本当にありがとう!
Lilaでした!バイバイ!」
武道館の上から下、左から右まで全方位に手を振りながら、わたしはスポットライトに照らされたステージを降りていった。