【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第51章 優しい彗星
しばらくして藤さんが車を停めたのは、渋谷のスクランブル交差点脇のコインパーキング。
「?渋谷…?」
連れてこられた場所が予想外過ぎて、僕はますます頭にはてなを浮かべながら彼を見た。
「行くぞ」
それだけ言って目配せして車外へ出る彼につられ、僕もシートベルトを外して助手席を降りた。
藤亜蘭は変装用のサングラスをかけると、目的の場所へと歩き出した。
言われるがままついて行き、藤さんが足をピタリと止めたのはスクランブル交差点のディスプレイが5つ同時に見える場所だった。
「???」
「そろそろか」
何がしたいのか全くわからずに困惑する僕をよそに、手元のスマホを見ながら藤さんがポツリと呟いたとき
バラバラの広告が流れていた5つのディスプレイがすべて同時に真っ暗になる。
その後、どこかのライブ会場のような映像が映り、そこからは観客のアンコールを叫ぶ声が流れてきた。
アンコール!
アンコール!
「?何?何のライブ?」
「中継??」
通行人も、その映像に気づいて次々と足を止め、スクランブル交差点にいる人々は5枚のディスプレイに釘付けになった。
そして、次の瞬間そこに映ったのは…
「…リラ…」
アンコールをコールされ、ステージに上がったのは他でもない Lila だった。
1ヶ月ぶりに見たリラは、長かったピンクブラウンの髪を金髪に染め、バッサリとショートカットにしていた。
「わ!!Lilaだ」
「ほんとだー!ライブ今やってるのかな?」
「金髪ショート、超可愛い!」
周りの人たちも大画面の5枚のディスプレイにリラが映ったことに気づき、口々に歓声を上げた。
そんなとき、リラがマイクを口元に近づけて静かに話し出した。
「みんな、今日は本当にどうもありがとう。
…忘れられない、思い出になりました」
そう言って、何万人の前ではにかんで笑うリラは、誰よりも何よりも輝いて見えた。
そして、リラは前をまっすぐ見据えて、はっきりとした口調で言った。