【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第51章 優しい彗星
風見の家で少し仮眠をとった僕は、予定通りポアロのバイトに出勤した。
「お疲れ様ですー」
そう言って店内に入ると、先にシフトに入っていた梓さんは僕の顔を見るなり心配そうに眉を下げた。
「安室さん、具合でも悪いんですか?」
「?どうしてです?」
体調自体はいつも通り良好なだけに、梓さんがそう尋ねて来た理由分からず首を傾げた。
「このところ、元気ないなーと思って。
なんていうか…寂しいような、悲しいような、そんな顔をしているから…」
あぁ…
自分ではそんな自覚全く無かったけれど、僕は他人が見てすぐにわかるほど、ちゃんと傷付いているのか…
自分から振ったくせに、図々しくも。
リラは今、一体どんな顔をしてるんだろうか。
僕が毎日毎秒リラのことを思い出すみたいに、リラも僕を恋しく思ってくれているだろうか。
それとも、嘘つき。最低。だと、僕を忘れようとしているだろうか。
相変わらずまた、リラのことばかり考えながらコーヒーを淹れていたとき、客の1人が店の外を見て驚きの声を上げた。
「お!なんだあの車!
かっけぇー!」
「マセラティだな」
マセラティか…
どうせ、どこかのお金持ちのおじ様が乗っているんだろう。
なんて、思いながらコーヒーカップにコーヒーを注ぎ、お客様に提供した瞬間、ポアロのドアベルがカラコロと鳴った。
「いらっしゃいま…」
接客中の僕の代わりに、その客を迎えようとした梓さんは、不自然に言葉を失った。
「あ…ぁ…!」
と、今度は言葉にできない思いを絞り出して声にしようとしているような、そんなそぶりを見せる梓さん。
「?どうしました?」
コーヒーの提供が終わった僕は、梓さんが指差す方を見た。
そこにいたのは
「久しぶり。アムロさん」
「ふ…
「キャーーーー!藤亜蘭様!!!!!!!」
僕が彼の名前を呼ぼうとした次の瞬間、つんざくような梓さんの黄色い声が大音量で響いた。