【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第50章 Last Kiss
零、風見さんの家にいるんだ…
わたしの知ってる人のところにいて、何となくホッとしたのも束の間、風見さんから残酷な現実を告げられる。
「降谷さんに言われて、降谷さんの私物をいくつか引き取りに来ました。
失礼してよろしいでしょうか?」
ショックで、言葉も出ない。
わたしともう会うつもりは一切ない。
間接的にそう言われた気がして、またわたしの目に涙が溜まって行く。
風見さんはそんなわたしの様子を見て、とても心配そうに眉を下げたが、同情を振り切るかのように 失礼します と一言添えて家の中に入った。
リビングに置きっぱなしになっていた零のノートPCと、衣装ケースの中から零の私服を数着紙袋に入れた風見さん。
どこにあるか迷うそぶりを見せないあたり、きっと零に細かく指示されたんだろう。
テキパキと引き取るものを整理した風見さんは、
「これで、とりあえずは。」
そう言って会釈すると、帰るために玄関へと向かう。
わたしはその後ろをパタパタと小走りで追った。
「では、失礼しました」
靴を履き、また一礼をして出て行こうとする風間さんに、わたしは思わず本音を溢してしまった。
「荷物すら、取りに来てくれないんですね…零…」
「…降谷さんは、お忙しいので…」
「あんなに、幸せだったのに。
…もうわたしの顔なんて見たくもないんだ…」
「それは違います!!」
わたしのこぼした言葉に、風見さんは声を大にして反論した。
「降谷さんは…今でもあなたのことが好きです。
会いたくて、たまらないはずです。」
「じゃあ、どうして風見さんに来させたの?!
あれが最後…
あんな、たった数分の別れ話で最後?!
愛してるなんて、嘘ばっかり…」
吐き捨てるようにそう言って泣き崩れたわたしを見て、風見さんは静かに呟いた。