【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第50章 Last Kiss
昨日は零のシャツを抱きしめたまま、ソファーで寝落ちしていた。
どんなに悲しくても、涙が次々と溢れてきても、お腹は空くし眠たくなるんだから、人間とはつくづく難儀な生き物だ。
そのくせ、目が覚めると途端に絶望感に襲われて、わたしはまたソファーの上で零のシャツを抱きしめた。
擦りすぎて赤くなった目は、腫れて二重幅がさらに広がっている気がする。
零のシャツを、こんなに涙で濡らしてしまったら怒られるかな。
怒られてもいい。むしろ怒ってほしい。
わたしのこと、無かったことにしないで…
零と一緒にいたいの…
そんな気持ちが溢れては、ぐすっと鼻を啜った時
ピンポーーン
インターフォンがなる音がした。
どうせ山岸さんだ。
さっきから、わたしのスマホが鳴ってるのにわたしが出ないから心配して迎えにきたんだろう。
そう思い、ちょうどまた鳴り出した山岸さんからの着信をとるため、ソファーから手を伸ばしてスマホを手に取った。
「もしもし」
「Lila!良かった!出た!
今日仕事だよ!?」
「…今日は休む。体調不良ってことにしといて。
インターフォン鳴らされても出ないから。帰って」
「?インターフォン?なんのこと?」
山岸さんの、寝耳に水。という反応を聞いて、わたしの頭に浮かんだのは、零の顔だった。
まさか、零が帰ってきた?!
そんな夢物語を心の底から望みながら、わたしは山岸さんの電話を一方的に切った後、急いで玄関へ向かいドアを開けた。
「零!?!」
目の前にいた人物は
「…ご無沙汰しております」
「…風見さん…」
目の前にいたのは、零じゃなく、零の部下である風見さんだった。
「あ…零なら…」
零なら今家にいません。と、本当なら言いたくないけれどそうは行かず、伝えようとした。
が、風見さんは気まずそうにメガネのブリッジを押さえて言った。
「存じております。
降谷さんは今、私の自宅にいますので…」
「そう…ですか…」