【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第50章 Last Kiss
翌朝
ホテルの部屋のチャイムが鳴る音で、わたしは目を覚ました。
昨日、あれから山岸さんにここに連れて来られ、何度も何度も気をしっかり持って。と言われながら別れた。
気をしっかり持ってって、何が…?
零と別れるなんてありえない。
きっと、今日の生放送が終わって家に帰ったら零が美味しいご飯を作って待ってくれてる。
未だに長い悪夢を見ているような気分のまま、わたしはベッドから起き上がると、ホテルの部屋のドアを開けた。
「Lila!心配したよ!
何度もチャイムを鳴らしたんだよ!?」
まるで、わたしが間違ったことをしないかを心配していたかのように、わたしの顔を見て山岸さんが安堵の表情を浮かべた。
「…大丈夫だよ。だって…」
別れるなんて、嘘だから。
きっと、零は迎えに来てくれる。
そんな現実逃避だけが、唯一の心の支えだった。
「Lila…」
「生放送だよね。支度するから少し待って」
それだけ言うと、わたしは山岸さんを部屋の前に残し、再び身支度のために部屋の中に戻った。
ふと鏡で自分の顔を見ると、まるで生気を吸い取られたような、青白い顔をしてた。
ダメだ…笑わなきゃ。
こんな顔してたら、ますます昨日のことが現実のことみたいじゃない。
得意の作り笑いを鏡の前で練習して、わたしは荷物を持ってホテルの部屋を出た。
歩くたびに足元が揺れてる気がして、まだ夢の中にいるみたいに思えた。
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