【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第50章 Last Kiss
零にサヨナラを告げられ、絶望したまま夜の暗闇の中でひたすらに泣き続けたわたし。
それから、ほんの数分後のことだった。
「Lila!」
名前を呼ばれて、ふと顔を上げた。
そこにいたのは、山岸さんだった。
「なんで…山岸さんが…」
「…安室さんに、Lilaを連れて帰ってやってくれと言われて…」
零は、思い出の場所にわたしを置き去りにしたくせに、ちゃんとわたしが危ない目に遭わないように山岸さんを呼んでいてくれた。
「っ…どうして…
振るなら、もっと冷たくしてよ…」
そんな優しさが、今のわたしにはどうしようもなく痛くてたまらない。
「Lila…ひとまず今日は休もう。
事務所近くのホテルを手配したから」
足元がおぼつかないわたしの肩を支えて、山岸さんが車に乗せてくれた。
助手席の窓に寄りかかり、ボーッと窓の外を眺めてた。
別れるってことは、もう二度と零には会えないと言うこと?
明日、生放送が終わってあの家に帰っても、零はいないの?
とても信じられない。
きっと零なら考え直してくれる。
明日の生放送が終わって、局を出たら、
きっと前みたいにあの白いRX-7で迎えに来てくれる。
それで、わたしを連れ去ってくれる。
そんなことばかり、考えてた。
まるで夢の中にいるみたいな気分のまま、涙だけはボロボロとこぼれ続けた。
*
*