【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第50章 Last Kiss
「リラ…終わりにしよう。
アメリカに行って、今よりもっとたくさんの人にその歌を届けて、たくさんの人の希望になって。
君は、僕だけのものにしていい人間じゃない。」
「や…だ…いやだ…零っ…」
子供みたいに、彼に縋ることしか出来ない。
涙すら出ずに、ただ必死で零の腕を掴もうとした。
零は、わたしが必死に伸ばした手を掴むと、自分の腕の中に引き寄せて一度唇を重ねた。
零のキスはいつも優しいけれど、今日はとびきり優しい…
そしてわたしをぎゅっと抱きしめた。
まるで、最後の抱擁みたいだ。
「今まで、ありがとう。」
「っ…零…」
「さようなら」
零の優しいサヨナラが、耳元で響いた。
そして同時に、わたしの目から涙が溢れた。
そんなわたしに、零は最後の最後で愛の言葉を囁いた。
「……愛してる」
「っ…れ…」
どうして今…
零が初めて愛してると言ってくれたのは、わたしたちの一番最後の瞬間だった。
そして零は、わたしから身体を離すと身体を翻し、車に乗り込んでその場を去っていった。
わたしは、ただその場に膝をついて、ただ涙を零すしか出来なかった。
彼の名前すら、上手に呼ぶことさえ出来ずに
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