【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第50章 Last Kiss
そう思ったわたしは、零に縋るように言う。
「っ…でもわたしは、断ろうと思ってる!
零と一緒にいたいから…零と離れたくないから」
「僕も同じだ。
…でも」
零の両腕を掴んだわたしの手を、優しくゆっくりと外しながら、零はわたしの瞳を覗いた。
零の瞳は、優しく揺れている。
別れ話をしているくせに、どうしてそんなに優しい目をするの…?
言葉を失っているわたしに、零は静かに続けた。
「僕がリラについていくと言う選択肢もあるんだ。
僕が今まで守ってきたこの国を捨て、大事にしてきた使命感も、誇りも、プライドも、全部捨てて、警察官を辞めてリラについてアメリカに行く。
それを、僕はどうしても選べなかった。」
「そんなの…望んで無いよ!」
零に全部捨ててアメリカに来て欲しいなんて、そんなこと一瞬でも思ったことなかった。
わたしの中の選択肢は、わたしが歌を捨てるか、零との未来を捨てるかの2択だったから。
わたしが頭に浮かべた2択を、見透かしたかのように零が哀しく笑った。
「僕には、自分の使命や誇りを捨ててることができない。
なのに、リラにだけそれを捨てさせるのは、違うだろ…?」
「…っ…」
「リラがアメリカに行くのを辞めて僕と一緒になる道を選ぶと言うことは、
リラはリラの誇りや、歌手としての使命を全部捨てるってことだ。
…フェアじゃない。」
「そんなの、わたしは気にしない…
わたしは…」
零と一緒にいる未来を選びたかった。
全てを捨ててでも零と離れたくない。
だけどそれは、零の言うようにフェアじゃないんだろうか。
信じたくない。認めたくない。
運命なんて信じないと言ったバチが当たったの?
わたしにとっての運命の相手は、零じゃなかった…?