【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第7章 君との距離
ライブ開始10分前。
脅迫状のことが気にならないかと言われたら、そりゃさすがに怖いよ?
だけどわたしは、せっかくこの日のためにチケットを獲得して、今会場に集まってくれてるファンのことを裏切るなんて出来なかった。
必ず、成功させる。
歌わないわたしに、価値なんてないもの
ライブ衣装に着替え、身体を動かしながら最終のボイストレーニングをする。
そして、いよいよ5分前
スタッフやサポートメンバーと一緒にいつもの円陣を組んだ。
「…安室さんも!」
「え?僕はいいですよ」
「はやく!安室さんも今日のライブの大事な仲間だよ?」
そう言うと、安室さんは遠慮しがちにわたしの隣に来て円陣を組んだ。
「えーっと、今日はLilaにとって、初の武道館です。
みんなの力を合わせて、最高のライブにしよう!」
「「「おう!!」」」
みんなで円陣を組んで気合を入れる瞬間がすき。
不安も緊張も全て吹き飛ぶから。
「すごいですね」
「え?」
隣にいた安室さんが徐に言う。
「いや、リラを中心に、こんな風に大勢の人間が纏まってる。
きっと、君が毎日努力してるのをみんな見ているんですよ」
安室さんの優しい目で見つめられながらそんなことを言われると、思わず心臓が鳴った。
そんな嬉しいこと、誰も言ってくれないよ?
安室さんだけだよ?
「Lilaさんスタンバイお願いします」
スタッフに呼ばれると、安室さんはわたしの目の前に両掌を出した。
「頑張れ。そして、楽しんで」
「うん!行ってきます」
差し出された手のひらに勢いよくハイタッチして、わたしは安室さんに手を振ってステージに走っていった。
スポットライトが眩しい、光の向こうへ
そうしてライブが始まった。