【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第7章 君との距離
「ど、どうしよう…中止にするならはやく、アナウンスを出さないと…」
山岸さんが慌てふためく中、リラはケロッとした様子で言う。
「何言ってるの?
中止になんかしないよ?
予定通り、ライブをやります」
「え…!け、けどリラ…」
「脅迫状には、わたしを殺すとしか書いてない。
お客さんに危害を加えるって書いてないから大丈夫だよ」
リラは少しの迷いもなくそう言った。
まさか、続行するのか?
冗談だろ?
自分を殺すと書かれてるんだぞ…
どれだけ君は、歌に拘るんだ。
「…僕は反対だよ」
僕から出たのはその言葉だった。
わたしを殺すとしか書いてない
って、十分すぎるぐらい緊急事態だってことを分かっていない。
リラがどれだけこのライブのために準備してきたか、よくわかっているはずなのに。
リラが危険な目に遭う可能性が少しでもあるなら、首を縦に振るわけにはいかなかった。
「でも…安室さんが、守ってくれるんでしょ?」
リラは、真っ直ぐ僕の目を見てそう言った。
守る…
そうだな。僕の今の1番のミッションは、リラを守ることだ。
そしてこのミッションは、きっともうすぐ終わりを迎える。
ストーカーがこんなにわかりやすい方法で刺激してきたんだ。
きっと姿を現すのも捕まるのも時間の問題。
そうなれば、僕はお払い箱だ。
「…守るよ。必ず」
せめて、一緒にいられる間は、全力で君を守りたい。
リラを決意は固く、揺らがない。
僕はリラのそう言うところを好きになったのかもしれない。
自分の好きなことに真っ直ぐで、歌に何より情熱をかけているリラを。
僕はフゥ…とため息をついた後言った。
「始めから終わりまで、ずっと舞台袖から見ています。
…必ず、僕が守るから、リラはライブのことだけ考えていればいいよ。」
「うん。ありがとう、安室さん」
Lilaは美しく笑った。