【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第49章 守りたいもの
お店を出る頃にはもう時計の針は23時近くを指していた。
「もうこんな時間!
帰ったらすぐお風呂入っておやすみなさいだね」
助手席に座ってそう言いながら零を見ると、零はハンドルに腕を置いたままボーッと目の前を眺めてた。
「零?」
「…あ、ごめん…ボーッとしてました」
そう言って笑う零の顔は、何だか疲れているように見えた。
このところ、公安にポアロ、以前に言っていたヤバい組織への潜入にずっとバタバタしてたから…
「零、もし良かったら、運転変わろうか?」
「え…でも」
「ミッションの免許持ってるし、
山岸さんの車、たまに運転したりしてるんだよ?
あ、でも零が愛車を他の人に運転させるの嫌なら…」
「…じゃあ、お願いしようかな」
零は笑ってそう言うと、運転席を降りて助手席のドアを開けた。
わたしは助手席を降り、零がいつも座っているRX-7の運転席に腰掛けた。
この車に初めて乗ってからもう随分経ったけれど、運転席に座るのは初めてだ。
零のシートの位置は随分後ろで、彼とわたしの体格差が身をもって感じられてちょっとドキドキした。
「リラが運転するところ見るの、初めてですね」
「だね…もう付き合って随分経つのに、まだ初めてのことあったんだね」
「…そうだな」
零は少し切なそうに笑ってわたしを見た。
まるで、最初に出会った時の笑顔みたいで、思わず胸が軋んだ。
「そう言えば、寄り道したいって言ってたよね?
どこに行けばいい?」
「ここに」
零は自分のスマホでナビを入力すると、運転席の前にスマホを置いた。
「了解!じゃあ出発します!」
「お願いします」
意気込むわたしを見てクスクスと笑う零。
最初で最後のRX-7の運転席。
わたしは、ゆっくりとアクセルを踏んだ。
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