【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第49章 守りたいもの
「じゃあ、まずは恐竜の骨格標本見に行く?」
「行くーー!!」
勢いよく返事をしたわたしを見て微笑んだ零。
2人で手を繋いで、ティラノサウルスの骨格標本を見上げた。
相変わらず、その壮大な化石を見るのに夢中なわたしを見て、零はフッと笑みをこぼした。
「相変わらず、自分はちっぽけな存在だなって安心しますか?」
「よ、よく覚えてるね…
…でも、感じ方はあの頃と少し変わったかも。」
「と言うと?」
「零と出会って、付き合い始めてから、わたしから見える景色が少しずつ変わった気がする。
…前は、自分を強く見せよう、弱さを隠そうと必死だった。
だから、こんな風に壮大な何かを見ると、安心したの。
所詮人間はちっぽけな存在だと感じると、あぁそんなに頑張らなくてもいいのかなって思えて心が軽くなったから。」
零は上を見上げながら、繋いだわたしの手をぎゅっと握った。
「でもね、零が色んなこと教えてくれたから。
誰かを信じることも、自分の過去と向き合うことも。
強がらなくていい。弱さを見せてもいい。
そう教えてくれたから。
だから、今はこれを見ても前みたいなことは思わないかな」
「…そうか」
そう。
零と出会って、見える景色が変わった。
同じものを見ても、前と今じゃ見え方が全然違う。
零と一緒にいることで、人として大切な何かを身につけていっている気がした。
「ありがとう、零」
「…僕の方こそ、リラに出会えて、付き合えて良かった。
ありがとう。」
零はふわりと笑ってわたしを見た。
今日なら、きっとわたしは零に言える。
プロポーズを受ける。
歌が歌えなくなってもいい、零のそばにいたい。
そう言える。
「…あのね、わたし零に話があるの」
「僕も、君に話がある
…でも、その前に、ご飯食べに行きませんか?
お腹空いてしまって」
珍しく零が、お腹を押さえながら笑ってそう言った。
いつもの零らしくないその可愛い仕草に、思わずきゅんとしながら、わたしも同じようにお腹を押さえながら笑った。
「そうだね!お腹空いた!」
長く一緒にいても、きっとまだ見てない零の表情はたくさんあるはず。
それを、これからも見つけていければいいな…
切に、そう願ってた。
*
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