【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第49章 守りたいもの
「じゃあ、インタビューはこれで終了です。
ご協力、ありがとうございました」
「こちらこそ!記事、楽しみにしてます!」
午前中、唯一入っていた雑誌のインタビューの仕事を終えたわたしは、山岸さんを探しに会議室を出た。
執務スペースを探しても見当たらず、タバコも吸わない山岸さんが喫煙スペースにいるはずもなく、おかしいなと思いながら廊下に出ると、一番奥の非常階段のドア前に山岸さんの姿を見つけた。
「山岸さん!」
「っ…じゃあ後ほど…」
どうやら山岸さんはどこかに電話をしていたみたいで、わたしが声をかけると慌ててその電話を切った。
「あ、ごめん…電話中なのわからなくて…」
「いや?もう終わったから。
インタビュー、どうだった?」
「全部ちゃんと賢そうに答えたよ?」
ふふん。と胸を張るわたしに、山岸さんはそうかそうかと言いながら笑った。
「今日、家まで送ろうか?」
「ううん?今日はこれから安室さんとデートなの。
迎えに来てくれることになってるんだ」
「そう。…楽しんで?」
「うん!ありがと。
じゃあ、わたし事務所の前で車待つから。
明日の生放送、よろしくね?お疲れ様です」
そう言って山岸さんに手を振ると、零が迎えに来てくれる事務所のエントランスまで小走りで向かった。
外に出るとすぐにRX-7を見つけたわたしは、運転席に座る零に手を振りながら近づき、助手席のドアを開けた。
「お待たせ!」
「お疲れ様」
そう言って、いつもと同じように優しく微笑んだ零は、わたしの頬にキスをする。
「どこ行く?デート久しぶりだね!」
「…国立科学博物館に行こうか」
「え…」
その提案に、思わず目を見開いて驚いてしまう。
そこはわたしたちが恋人同士になってから、初めてデートした場所だった。
どこ行きたい?って聞かれて、素直に「国立科学博物館」と答えたわたしは、即座にそれを後悔したことを覚えてる。
もっと、可愛い場所を言えばよかったと。
それでも零は、いいね。と笑ってくれた。
現地に着いてからも、ずっと楽しそうにしてくれてた。
そして、あの日初めて彼と手をつないだ。